サイエンスの世界にいる以上、英語力は研究をする上で必要な能力です。
日本国内のラボに所属している場合、修士・博士課程学生は学術論文を英語で読むことや、英語での論文執筆を経験します。
従って、日々の研究生活の中で、英語の Reading & Writing 能力はある程度成長が見込めるかと思います。
しかし、近年では国内の学会でも英語によるプレゼンテーションと質疑応答が求められることが多くなってきました。
英語の Listening & Speaking 能力は留学生の多いラボに所属しない限り、研究生活の中で自然と身に付くことはないだろうと思います。
私が学生時代に所属していたラボは公用語が英語であったため、7 年間の研究生活の中で英語の 4 つの能力を伸ばすことができました。
そのような環境下でも、不自由なく Listening & Speaking ができるようになるまでには 4 年程かかりました。
私は元々英語で留年しかけるほど苦手であったため、その 4 年間に英語でサイエンティフィックな会話ができるようになるために様々な努力をしてきました。
振り返ってみると無駄だったことも多くありますが、「これをやって大きく成長できた」という勉強法も発見することができました。
今回は私の経験からお勧めする、サイエンス英語を最短でできるようにするための勉強法をご紹介します。
目次
学会や論文からよく使う言い回し、フレーズを収集する
この記事で目指す到達点は、「学会やラボでの研究発表と質疑応答を英語で不自由なくできる」ことです。
そのための1段階目は、サイエンスの世界で使用される英語を覚えることです。
研究を志す者であれば、普段から英語の学術論文は読んでいると思います。
しかし、論文内で使用される書き言葉は、実際に発表やディスカッションの際に使用する話し言葉と異なることが多いです。
初期の段階では、論文から得たボキャブラリーを基にしても良いですが、目標へは遠回りになってしまいます。
話し言葉の収集の仕方として、留学生による学内発表や、英語で先生方が話されるセミナー、英語での発表をルールとする国内学会に行くと効率よく単語やフレーズを学ぶことができます。
研究発表で内容を理解しつつ、「この言い回しカッコいいな」「この表現の仕方は使えそうだな」と感じたフレーズをメモ帳の隅に書いておき、ストックしていくと良いです。
例えば「それは未だ不明である」を英語にすると、一般的には「It is still unknown」などと表現されますが、サイエンスの発表などでは「It is poorly understood」や「It is to be determined yet」と表現されることを知ることができます。
英語のプレゼン原稿を作って、サイエンス英語ができる人に添削してもらう
実際にサイエンスの世界で使用される単語やフレーズを収集できたら、次のステップは自分の研究を英語で発表するための原稿を作りましょう。
自分の研究内容であれば発表内容を熟知していて、発表の流れや構成も固まっていると思いますし、何より今後英語で発表を依頼される可能性が高いので、サイエンス英語を勉強する題材としてはこの上なく適していると思います。
最初は文法や単語の重複などの細かい部分はあまり気にせず、なるべくシンプルで自分が理解しやすく、覚えやすいフレーズを原稿に組み込んでいきましょう。
原稿を書いてみたら、近くの留学生やサイエンス英語の得意な先生や先輩に添削を依頼して、英語的にもサイエンス的にも問題のない原稿の作成を目指しましょう。
頼みづらいと感じるかもしれませんが、真剣に取り組んで成長を目指しているのであれば、先生や先輩にとっても指導している学生や後輩の頼みを無下に断ることはないと思います。
先生や先輩、留学生に頼み事をする際に重要なポイントはこの記事でもまとめていますので、ぜひご覧ください。
発音を含めて原稿をひたすら音読し、暗記する
原稿が完成したら、第 3 ステップは「正しい発音で原稿を丸暗記する」ことです。
何度も原稿を音読し、丸暗記することでボキャブラリーとフレーズをたくさん頭の中にすり込んでいきましょう。
私の場合は発表内容だけでなく、予測質問に対する回答についても英語の原稿を作り、暗記していました。
この準備は非常に大変でしたが、効率的に英語のフレームワークを頭の引き出しに入れておくことができました。
この訓練を行う中で、何度も出てきた単語やフレーズは自然と覚えていきます。
この状態まで暗記することができていれば、自分が話したい内容を覚えたフレーズを組み合わせることで、口に出すことができます。
また、原稿を暗記する際に必ず単語の発音を調べて、それも含めて暗記することを心がけましょう。
実は、「伝わる英語」を話せるようになる上で最も大切なことは「発音の矯正」です。
我々日本人の英語は発音を矯正しない限り、いつまでたっても Japanese English となり、中々 English Speakers に理解してもらえません。
逆に、発音さえしっかりしていれば、多少文法が変でも相手に聞き取ってもられるため、会話や議論を展開することができます。
私は発音を調べる際には 「Weblio 英和・和英辞典」を使用して、発音を実際に聞きつつ自分でも発音することを繰り返し、発音を覚えています。
また、私は発音を直すだけで英語が面白いほど伝わるようになった経験から、英語の発音を1から学びたいと思いました。
その時に一番効果があった勉強が「フォニックス」の学習です。
フォニックスはアルファベットの 26 文字の発音の仕方を学ぶ勉強で、英語圏の子供が初めに行う勉強です。
フォニックスを覚えたことで英語の話し方がネイティブっぽくなるだけでなく、初めて出会う単語でも発音の仕方がある程度分かるようになりました。
更に、英語は自分で発音できないものは聞くことができないので、発音を矯正することでリスニング力も向上させることができます。
ここまでの過程の中で、結果的に Writing, Speaking, Listening の3つの英語の能力を伸ばすことができます。
留学生とのディスカッションや学会で実際に英語を使って議論してみる
ここまで来ると覚えたフレーズを組み合わせることで、予想以上に自分が考えていることを英語で話すことができるようになっていると思います。
英語で話す中で思ったことが中々英語にできないと感じた時は、その内容をメモしておき、後で単語や文法を調べ、原稿にそのフレーズを組み込むように修正し、再度暗記します。
この「話せない → 調べる → 原稿に組み込む → 発音と共に暗記する → 実際に使ってみる」を繰り返し行うことで最短でサイエンス英語を話せるようになります。
私の場合、学生時代のラボの発表は全て英語だったのでこのサイクルが回しやすかったです。
しかしながら、このような環境のラボは日本にそれほど多くないと思います。
サイエンス英語を使う場が少ない場合は、自分たちでスタディグループを作り、ジャーナルクラブや研究発表を英語で行う場を作ってみると良いと思います。
英語を勉強しつつ他の分野の研究を知ることができますし、何より同じ志を持った人で集まるので、たとえ失敗しても気にする必要がありません。
私自身も同じ大学院の有志(自分以外は留学生の先輩)を集めて、分野を問わない英語のジャーナルクラブを週一回主催していました。
最初は英語も免疫学以外の分野の話も全然理解できませんでしたが、頑張って継続する中で英会話ができるようになっただけでなく、神経学や代謝制御といった専門分野以外の知識を得ることができました。
こういったエピソードは研究者としての能力の向上や自己肯定感の増加にも繋がりますし、就活する時の強力な自己アピールとなりました。
英語は恥ずかしい思いをした分だけできるようになる
サイエンス英語を話せるようになることは、研究者全員が目指すべき一つの姿だと思います。
しかしながら、現状ではそれが普通にできる研究者はそれほど多くありません。
従って、「サイエンス英語が不自由なくできる」というだけで強力な武器になります。
私自身、就職活動の時にこの英語ができるというアピールがかなり有効でしたし、入社後の現在でも英語を必要とする場面で声をかけられることが多いです。
このような大きなメリットがあるにも関わらず、多くの人が英会話を勉強しない理由は「英語を話す環境がない」と「恥ずかしい思いをしたくない」だと思います。
前者は前述の通りですが、後者については自分の考え方次第だと思います。
私も海外留学をした際に英語がうまく聞けなくて、多く恥ずかしい思いを経験しました。
その悔しさがあったからこそ、努力を重ねてサイエンス英語ができるようになり、国際学会の発表賞を複数得ることができるまでに成長できたと思っています。
「失敗は成功のために必要な過程である」ことは我々研究者が一番良く知るところだと思います。
特に、若いうちの方が失敗への抵抗感は比較的低いと思いますので、億劫にならずにぜひトライしてみましょう。
もし需要があれば、英語原稿の添削や英語での研究発表の指導などの依頼を受け付けますので、本気でサイエンス英語が話せるようになりたい方は是非ご相談ください。
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