アカデミアであれ、企業であれ、研究室という場所はすごく閉鎖的な空間であろうと思います。
同じ目的や志を持つものが集まる故、協調だけでなく切磋琢磨するなかで自己成長を感じられる場であります。
しかし、このような環境では考え方や行動にバイアスができ、視野が狭くなりやすいという問題も孕んでいます。
私は「人間は自分の考え方や知識の範囲外のものに出会った時に成長する」と思います。
従って、研究者として、そして社会人として、常に成長し続けるためには input を怠らないことが重要であると考えています。
研究プロジェクトを進めるに当たっては、学会発表等を通じてラボの外の環境に出ることで、実験手法や考え方の多様性に触れ、学びを得ることができると思います。
では、社会人として、もしくは人間として成長し続けるためにはどうすればよいか?
その一つの方法が本、特にビジネス書を読むことであると思います。
私は、昔から本を読むことはすごく嫌いですし、正直今でさえ心から好きとは言えません。
それでも、企業研究員として成長するために読書を続ける理由と、多忙な中でも読書を通じて効率的に学びを得る方法をご紹介します。
目次
仕事や研究ですぐに活用できる情報を得ることができる
私がそもそも読書を始めた理由は、博士課程の研究がどうしてもうまく行かなかった時期に、「どうしたら優秀な研究者なることができるだろうか」と思ったことがきっかけです。
最初は参考になりそうな情報をネットで探していましたが、当時の自分が満足するような答えを提示するものはありませんでした。
私は読書は嫌いでも書店に行くことは好きで、そのような状況の時にたまたま立ち寄った本屋で「イシューからはじめよ」を見つけました。
この本の内容を冒頭だけ立ち読みして、「この本は自分の知りたいことを教えてくれるかも」と思い、早速購入して読みました。
前述のように、私は読書嫌いですが、「自分の知りたいこと」かつ「仕事に必要なもの」であると思いの外飽きずに読むことができました。
本から得た Tips や考え方は読み終えた直後から実践し、研究に反映することができました。
必要な情報を得るための手段として、「目的意識を持った読書」はスキルアップや自己成長のためのコスパの良い投資であると思います。
仕事前に読書することでスイッチを切り替えることができる
前項の理由から私は研究や仕事に直結するようなビジネス書を常に1, 2冊買ってあります。
読書することで仕事に対するモチベーションを高めることができます。
従って、読書から得られる内容の実践とモチベーションの向上を効率的に行う意味で、私は毎朝家を出る前の 20-30 分は読書をすることを博士課程の時から続けております。
研究をしていると実験の都合で朝に読書をする余裕がないと思われるかもしれませんが、重要なことは毎日少しずつでも続けることです。
5 分だけでも日々努力を積み重ねることで、仕事や研究に良い変化が出てくると思います。
自己研鑽をしていることで自信に繋がる
別の記事でも紹介したように、研究以外に努力していることがあると、あなたを推し量る「別のものさし」を持つことができます。
たとえ研究がうまくいかない時期になっても、「私は読書を続けて成長しているし、研究も同じようにいつかうまく行くようになるはず」と思えるようになります。
実際、私はこうしてメンタルコントロールをしていました。
また、私は研究に役立ちそうな本を読み続けたことで、多くの著名な研究者に共通する考え方や精神があることを知りました。
それを普段から意識して研究するようになったので、結局は研究者としての「ものさし」にも大きな自信を得ることになりました。
社会人として通用する語彙や言い回しを覚えられる
私を含め、多くの研究者が最初にボキャブラリーの不足を感じるのは、学振や学位論文を書くときではないでしょうか。
ビジネス書を読むことで得られるものは内容そのものだけではなく、堅い文章を書く時や公の場で話す際に有用な言葉遣いや言い回しを多く学ぶことができます。
実際、ビッグラボの教授や企業の上長クラス以上の人の話は内容だけでなく、話し方から教養の高さが伺えることが多いです。
きっと彼らも日常的に本を読み続けているのだろうと感じられ、まだまだ精進していかねばといつも思わせられます。
会話の中からビジネス書を読んでいることが相手に自然と伝わり、良い印象を与える
私は色々な研究者の人と相談からディスカッションまで、会話をする機会を意識的に多くしています。
その会話の中で、相手から得られる意見や考え方には「本人の直の経験」に由来するものだけでなく、「読んだり聞いたりした情報」も含まれます。
実は私には会話の内容から、相手の人が日頃本を読んでいるかどうかがわかる瞬間があります。
私はそれを感じる際に「この人はちゃんと研究以外にも自己研鑽をしているんだな」と思い、相手に対して社会人としての信頼が上がります。
このように感じるのは私だけではないはずで、同じように読書をしている人との会話では内容以上に伝わることもあると思います。
考え方の違いを理解しやすくなり、許容範囲が広がる
ビジネス書を読む中で、自分が考えもしなかったことや、自分とは正反対の意見を述べている本に多々出会うことになります。
更に、人それぞれ違う経験から主張を述べるので当然のことなのですが、似たことを論じているけれども、筆者によって大きく異なる主張が書かれていることも往々にしてあります。
私はビジネス書を読む中で、自分と考え方や意見が異なる時の理解度やその許容範囲を少しずつ改善することができました。
現代は分野横断の研究のアカデミアで重要性を増しており、製薬企業における研究は言わずもがな部署間の連携は必須です。
考え方の違う研究者たちと仕事をする中で、その柔軟性と理解の仕方を得ることができたのは読書のおかげだと思っています。
最後に
読書をすることで得られるメリットは本当に多くあります。
大半の書籍は 1000 円前後で購入できるため、自己投資として非常にコスパが良いと言えます。
逆に、安いゆえに読んでみてあまり役に立たないと思ったら読むのをやめて次の興味のある本を読み始めるくらいの気軽さが良いと思います。
また、別記事では製薬企業の薬理研究員が忙しい中でも読書を続け、得られたナビを最大限活用するために行っている方法についてご紹介しています。
読書習慣をつけてみようと思う研究者や学生の後押しになれば幸いです。
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